予防医療は、病気を未然に防ぎ、健康寿命を延ばすための大切な取り組みです。
ワクチンや寄生虫予防に加え、定期健診や生活習慣の見直しで、早期発見・早期対応が可能になります。愛犬・愛猫がいつまでも健やかに暮らせるよう、最適な予防プランをご提案します。
犬は人間と過ごすことが大好きです。健康で楽しく暮らせるように、いくつかの注意が必要です。
犬の社会化期は4〜13週齢と言われています。この時期にいかにいろいろな経験をさせてあげることができるかが、生涯を通しての性格に影響すると言われています。病院好きになってくれるかどうかもこの時期にかかっていますので、犬を迎えて数日様子を見たら、ぜひ一度健診のご予約をお電話ください。
社会化期はとても重要ですが、その期間の多くがペットショップなどで過ごす期間と重なってしまい、社会化がうまくいかない原因になっています。お家に迎える犬の週齢と社会化の進み具合を確認してから迎えるのも一つの方法です。
人間の不在時や就寝時は、原則としてサークルを用意してそこに入るようにしましょう。サークルは部屋の中のものをかじる、消化できないものを飲み込む、階段から落ちて怪我をするといった事故を防ぎます。
サークルは「閉じ込める場所」ではなく「落ち着く場所」にしなければならないので、普段からその場所にならすことも必要です。
食事は信頼できるメーカーが作っている総合栄養食のドライまたは缶詰タイプにしましょう。半生タイプはやめてください。ドライフードは2〜4週間で食べきれるサイズを購入します。特別なこだわりがなければ当院のおすすめもありますので、健診の際にご相談ください。
犬の健康のためには余計なものをあげないのが一番です。ご褒美も普段食べているフードで十分です。人間の食べ物や多くの市販おやつは、塩分・脂肪分・添加物など犬に不適切な成分を含みます。どうしても与える場合は、総合栄養食のフードをきちんと食べた時だけにしましょう。
トイレのしつけは社会化期に行うのが理想です。初めは室内で教え、お散歩に行くようになれば外での排泄も増えます。便は必ず持ち帰り、尿は水で洗い流すようにしましょう。
犬を家族に迎えるということは、その犬の一生に責任を持つということです。途中で飼えなくならないよう、最後までしっかり世話をしてください。
猫は独特の生活習慣と特殊なウイルス疾患を持つかわいい小さな生き物です。健康で長く一緒に暮らせるように、いくつかの注意が必要です。
猫の社会化期は3〜8週齢と言われています。この期間に多くの人に触ってもらい、人が怖くないことを学ばせること、体のあちこちを触られても嫌がらないように慣れさせ、ブラッシングや爪切り、歯磨きなどのケアを受け入れられるようにすることが大切です。この時期を逃すと、これらのケアが難しくなります。
猫は「一つの縄張りに一匹で」生活するのが最もストレスが少ないと言われます。一般家庭では「縄張り=家の中」であることが多く、一つの空間で複数の猫が生活することは必ずしも幸せとは限りません。
家から外に出る猫は、交通事故や伝染病のリスクが高く、総じて短命になりやすいです。現代の市街地では、完全室内飼いの方が安全です。
猫にとってトイレは非常に重要です。家の中に「猫の数+1」のトイレを用意しましょう。蓋なしで大きめのトイレに細かい鉱物系の砂を好む猫が多いですが、好みは個体差があるため、試行錯誤して最適な組み合わせを見つけてください。健康管理の面では、排泄回数がわかりやすい固まる砂タイプがおすすめです。
食事は信頼できるメーカーの総合栄養食(ドライまたは缶詰タイプ)にしましょう。半生タイプは避けてください。ドライフードは2〜4週間で食べきれる量を購入します。特別なこだわりがなければ当院おすすめのフードもありますので、健診時にご相談ください。
猫の健康のため、基本的におやつや人間の食べ物は不要です。ご褒美も普段のフードで十分です。人間の食べ物や多くの市販おやつは塩分・脂肪分・添加物が多く、猫に適しません。どうしても与える場合は、総合栄養食をしっかり食べたときだけにしましょう。
水飲みも猫の数+1用意し、常に新鮮な水を与えましょう。
猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルス、猫伝染性腹膜炎ウイルスなど、混合ワクチンでは予防できない疾患があります。これらは感染から発症まで数年かかる場合もあります。感染の有無は、他の猫と2ヶ月以上接触していない状態で血液検査を行うことで判定可能です。新しい猫を迎える際は、必ず事前に検査を行うことをおすすめします。
「予防」というとワクチン接種や駆虫薬投与が主体と思われがちですが、先進的な予防医学とはその子その子の一生を見据えて健康維持を目的にするためのものです。 その中にはワクチン接種や駆虫薬投与ももちろん含まれますが、年齢に合わせた健診とそれに基づいた未病段階での食事や生活改善など、「病気にかからないようにする」ためにできるすべてのことが含まれます。 当院には病気になっている犬や猫の来院はもちろんありますが、そうではない子たちもたくさん来院します。そうした子たちの来院は、例えば家に迎えた子たちの健康診断が目的であったり、定期的に来院しての身体検査であったりします。 例えば体重や体格、体温、心臓の音や皮膚の状態、関節の動き、血液検査やレントゲン検査、超音波検査など、定期的に獣医師がチェックをすることで「いつもと違う」少しの変化を捉えることができます。ご家族が異常に気づくほど症状が出てしまうよりもずっと早い段階で異常を見つけられることも多く、症状が出る前に対処することができます。 また何らかの症状が出ている時に普段の状態がわかれば、それがどの程度の異常なのかについても検討することができます。自分で症状を訴えることができず、どちらかと言うとそれを隠そうとしてしまう犬や猫は、「なぜもっと早く連れてきてもらえなかったのだろう」ということが多々あります。
健康なときの情報を蓄積するために、1〜数ヶ月に一度の身体検査と年に1〜2回の血液検査、年に1回程度の画像診断(レントゲン検査と超音波検査)により、健康寿命を伸ばして愛犬・愛猫との楽しい生活をお手伝いします。
ワクチン接種は大切な病気予防の一つですが、「たくさんうてばいい」というものではありません。どんなワクチンを、どんな間隔で接種すればいいかといった予防の基本は、近年どんどん考え方が新しくなっています。当院では、その子その子にあった適切なワクチン接種をご提案いたします。
日本では、犬と暮らす上で義務付けられている大切な予防注射の一つです。幸い日本ではしばらく発生してはいませんが、近隣諸国では今でも年に何万人もの人が狂犬病で亡くなっていて、犬がその発生に大きく関わっています。物流が発達して日本と海外の距離が縮まっている現代では、ヒアリが話題になっているようにいつ日本に狂犬病が入ってきてもおかしくありません。犬が人間社会で共に暮らしていくために、必ず接種してあげてください。
混合ワクチンという名前の通り、複数の病気の予防が一度にできます。この中には「コアワクチン」と呼ばれる必ず接種しておいた方がいいワクチンと、「ノンコアワクチン」と呼ばれる必要なければ接種しない方がいいワクチンとがあります。たくさん入っているものをうてばいい」と考える方が非常に多いのですが、不必要なワクチンを接種することで疾患のリスクが高まる場合もあるということが分かってきていますので、きちんとワクチンの中身を理解して愛犬・愛猫のために選択をしてあげてください。子犬・子猫から一緒に生活している場合は、最初の年は複数回の接種が必要になります。これも「☓回うてばいい」というものではなく、誕生日や自宅に来た日などからその子その子に最適なスケジュールに調整する必要があります。また、成犬、成猫になってからの定期的な接種も、不必要にたくさん接種することによる問題も近年は報告されています。こうしたことも踏まえて、最適なワクチン接種スケジュールを考えましょう。
フィラリア症は「犬糸状虫」という寄生虫が、蚊を介してうつる病気です。病気の犬の血を蚊が吸った際に蚊の中に寄生虫が入り込み、その後別の犬の血を吸う際に蚊の体内の寄生虫がその犬の体内に入ります。
この寄生虫を虫下しを投与して駆虫するのが「フィラリア予防」です。犬糸状虫は犬のほか、狐や狸といった野生動物にも感染します。そのため自然の多い札幌近郊では感染リスクが高く、予防は必須です。
駆虫薬は寄生虫が体内に入って1ヶ月程度経過した頃が最もよく効きます。そのため、毎年の投与開始は札幌では7月頃から、投与終了は蚊の吸血活動が収束した1ヶ月以上後までになります。「もう寒くなったからいらないかな」と秋〜冬の予防を怠ると、後々重大な問題を引き起こしかねません。指示通り忘れずに飲ませてあげてください。
マダニは雪が溶けるとすぐに活動が活発になり、春から秋にかけて吸血を繰り返します。マダニに寄生されると、
1. 吸血そのものにより起こる症状
2. マダニにより媒介される疾患
の2つが問題になります。
赤く腫れる、かゆみや痛みが出る、噛まれたあとがしこりになり長期間残るなどがあります。これらは無理にマダニを取ろうとして引っ張ると悪化します。見つけたら無理に触らず、病院へお連れください。
マダニの体内の細菌やウイルスが吸血時に送り込まれ、感染が起こります。人に致命的な症状を引き起こすものもあります。人のダニ対策は厚生労働省の「ダニ媒介感染症」を参照してください。犬では飲み薬や滴下薬で予防でき、動物病院で扱うものは市販品より安全かつ確実です。
ダニ媒介性脳炎:ウイルス性。人では頭痛、発熱、関節炎、痙攣、麻痺、昏睡、死亡、重大な後遺症。北海道で発生、札幌市内でも確認。犬でも類似症状あり。
SFTS(重症熱性血小板減少症):ウイルス性。人では発熱、消化器症状、出血など。致死率最大30%。西日本中心。犬や猫から直接人へ感染の可能性あり。
ライム病:細菌性。人では噛まれた部位の発赤、筋肉痛、関節痛、発熱、神経症状、心疾患、眼疾患。北海道で多発。犬も同様の症状を示し慢性化の恐れ。
バベシア症:原虫性。犬に発熱、貧血、黄疸、多臓器不全。西日本中心だが北海道でも報告あり。
マダニの体内の細菌やウイルスが吸血時に送り込まれ、感染が起こります。人に致命的な症状を引き起こすものもあります。人のダニ対策は厚生労働省の「ダニ媒介感染症」を参照してください。犬では飲み薬や滴下薬で予防でき、動物病院で扱うものは市販品より安全かつ確実です。
これらの病気は噛まれてから時間が経って発症することもあり、原因がマダニだと気づかれにくい場合があります。確実な予防のためにはマダニ対策を徹底することが重要です。
近年は札幌近郊でもノミの発生が見られるようになってきました。外へ出る猫、暖かい地方へ旅行する犬などでの発生が多いようです。ノミの予防もダニの予防と同じおくすりで一緒にすることができます。
病気や犬種・猫種によっては遺伝子検査で発症しやすさや体質を調べることができるようになってきています。例えばコリーやボーダーコリーではMDR1遺伝子という遺伝子の異常が多く、この異常があるとある種の薬の副作用が強くでます。問題が起きる前に遺伝子検査をしておけば、予防や治療でお薬を使う場合に気をつけることができます。病気の予防は今後も発展していく分野と考えられます。
すぎうらペットクリニックは大切なご家族の健康を守ります。ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。