心筋症は猫の循環器系の疾患で、中でも肥大型心筋症が最も多く認められます。肥大型心筋症の重篤な問題としてうっ血性心不全や動脈血栓塞栓症、突然死があります。
しかし、重篤な症状が出ていない、見た目健康に見える(でも調べると肥大型心筋症がある)猫はたくさんいて、それらの猫たちに上記の重篤な問題がどのくらいの確率で起こるのかについてはわかっていません。
また、肥大型心筋症の中でも閉塞性肥大型心筋症は、ヒトでは心血管死の予後悪化因子とされていますが、猫ではよくわかっていません。
アメリカでの大規模な研究では、健康な722頭の猫と無症状の肥大型心筋症の猫1008頭の調査で、「5年以内に循環器疾患で死亡する確率」は健康な猫で1.0%のところが30.5%になることがわかりました。3頭に一頭が5年以内に亡くなる計算になります。
「無症状の」肥大型心筋症は、日常生活で異常が見られない状態ですから、心臓の検査をしてみなければ見つけることができません。多くの場合はレントゲン検査や超音波検査、場合によっては血液検査の心臓マーカーを調べて初めて異常が見つかります。
時々お電話やメールで、「うちの猫がまだそれほど高齢ではないのに突然無くなってしまいましたが、何が原因でしょうか」と問い合わせのある場合があります。定期的に診察をしている子であればある程度推測できるものを挙げられる場合もありますが、診察をしたことがない子ではいろいろな原因が考えられすぎて特定するのは難しいです。しかし中には肥大型心筋症のように「家での見た目は元気」なのですが実は病気ということは結構多いと考えられます(循環器疾患に限りません)。
猫を動物病院に連れて行くのは、猫もご家族も大変とよく言われます。
でも、犬よりも猫の方がいろいろな症状が出にくく(猫の方が我慢強いのでしょうか・・・)症状が出たときには進行して手遅れ・・・ということも多々あります。
本当に健康かどうか、きちんと検査で確かめておくということは大切なことですね。