犬のアトピー性皮膚炎は「若い頃から体の一部あるいは広範囲に痒みがある」のが特徴です。
犬の痒みというとこうやって引っ掻いているイメージですが、例えば足先をいつまでも舐めているとか、よくブルブルしているとか、そういったことも痒みが原因の可能性があります。
アトピー性皮膚炎はアレルギー性皮膚炎と混同されやすいですが、アレルギー性皮膚炎は明確な「アレルゲン」という原因があるのに対して、アトピー性皮膚炎は「遺伝的に皮膚が弱い」ために「色々な原因で痒くなってしまう」という違いがあります。
つまり、アレルギー性皮膚炎はアレルゲンを取り除けば痒くなくなりますが、アトピー性皮膚炎はそもそもアレルゲンが特定できず、根本的な対応ができないことになります。
わかりづらいのは、アトピー性皮膚炎により皮膚の構造異常があるためにアレルギー性皮膚炎にもなりやすく、アトピー性皮膚炎+アレルギー性皮膚炎という子が多いことです。この場合、アレルゲンを取り除くと「ある程度」痒みが改善しますが完全に痒くない状態にはなりません。
また人ではアトピー性皮膚炎の多くは子供の頃に症状があっても大人になると軽快しますが、犬では年々皮膚の状態が悪化してしまうことがほとんどです。これは皮膚の状態が良くない状態が続くことで皮膚のダメージが蓄積していくためと考えられます。
皮膚は正常な状態から赤みや腫れが出て、それが続くと黒ずんできて、さらに放っておくと表面がガサガサ凸凹していきます。ここまで来ると正常な状態に戻すのはかなり困難になりますので、そうなる前に適切に対処してあげる必要があります。
残念ながらアトピー性皮膚炎を確定できる検査というものは今の所ありません。犬の皮膚の痒みに対して一つ一つ治療をし、最終的にそれでもかゆみがなくならなかったり皮膚炎を繰り返したりする場合には「アトピーが強く疑われる」ということになります。
アトピー性皮膚炎は皮膚の赤みがなくても痒く、掻くことで皮膚の状態が悪化するという悪循環なので、「痒みを取り除く」ことが必要になります。
最近は、例えば1日1〜2回の内服薬の投与で痒みをしっかり取ってくれるお薬
・アポキル錠
・ゼンレリア錠
や、月1回の注射で痒みをとってくれる
・サイトポイント
といった、皮膚の痒みの治療のための犬用の医薬品が複数出ていて、治療の選択肢が増えました。しかしこれらの薬「だけ」やっていればいいいと続けた結果「痒み止めをやっているのに痒みが引かない」というご相談もよく受けるようになりました。
こうした治療薬の効き目が今ひとつと感じたときは、何か他の原因がある場合がほとんどです。自己判断で薬を調節したり、怪しげな民間療法をする前に、まずは動物病院にご相談ください。