この時期、狂犬病の予防注射やフィラリア予防に来院する子の身体検査で口の中を見ると、歯周病を持っている子が多いことにびっくりします。2〜3歳と若いのに、歯肉が赤くなってしまっているような子も見ることがあります。
歯周病は歯の周りの顎の骨が細菌により破壊されてしまう病気です。「歯石の付着」はあくまでその一部に過ぎません。
歯周病は歯と歯茎の隙間が広がってしまい、その奥で「嫌気性菌」という、いわゆる悪玉菌が増殖することで進行します。見えないところで歯槽骨という歯の土台になる顎の骨が壊されていってしまうのです。
「無麻酔の歯石取りはできないのでしょうか」と聞かれることがあります。確かに「見えるところの歯石はおとなしい子であれば取らせてくれる」のですが、歯周病の一番の問題となる「歯茎の奥の最近が溜まっている部分(歯肉縁下プラーク)をきれいにする」ことはできません。そして、ここをきれいにしないと「歯周病治療」はできないのです。
見えるところの歯石を無麻酔で除去していた結果、表面的にはきれいだが歯肉に接しているところや歯肉の下は膿状の歯垢が溜まってしまっている。
歯の根元の歯槽骨はすでにかなり失われている。
歯は見えないところで気づかないうちに歯周病が進行していきます。口の臭いが「ちょっと気になる」のはすでに歯周病が進行した状態で、口の中でバイキンが増えて匂いを作っています。「だいぶ気になる」ようになってきた頃には歯周病が重度に進行してしまって、下手をすると顎の骨がなくなってしまっていたりします。そうならないようにするためには、定期的な全身麻酔下での歯周病治療と、ご自宅での歯磨きが大切です。
高齢になってから口臭や口の痛みで苦しまなくてもいいように、計画的な処置をしてあげてください。