不妊手術は雄であれば去勢手術、雌であれば避妊手術などと呼ばれるもので、計画性のない繁殖を避けたり、発情周期に伴う行動変化やストレスを無くしたり、生殖器系疾患の予防・治療のために行われます。
先日は猫の不妊手術について書きましたが、今度は犬の不妊手術について考えてみましょう。
当院では若いうちに不妊手術をすることをおすすめしており、現在当院に来院する犬では不妊手術をしていない子は多くはありません。中〜高齢になってから当院にいらっしゃる方の中には不妊手術をしていない子も散見されます。獣医師によって不妊手術に対する考え方には若干の差がありますが、様々なデータから不妊手術をするデメリットは少しあるが、それを上回るメリットが大きい事がわかっています。あとになって「不妊手術しておけばよかった!」となっても遅いので、家に迎える頃から考えておいてほしいですね。
犬の不妊手術のメリット
寿命は雄で14〜18%、雌で23〜36%長いと言われている
雄では早期の不妊手術で排尿時に足を挙げないままになることが多い
ホルモンに関連した病気の予防になる
乳腺腫瘍(プードル、ダックスフントなど小型犬が未不妊の場合10〜15%に発生されている。特にヨーキーとパピヨンでは20〜25%と突出して発生が多い)
子宮蓄膿症(雌で未不妊の場合25〜66%に発生)
前立腺肥大症(雄で未不妊の場合95〜100%!!に発生)
犬の不妊手術のデメリット
全身麻酔が必要であること:手術前の評価をきちんとすることでリスクは最小限にできる
体重が増えやすくなること:フードの種類や量で管理することが可能
ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ロットワイラー、ジャーマン・シェパード・ドッグでは早期の不妊手術により増える病気があることがわかっているため、手術時期は検討する必要がある
基本的には雄でも雌でも不妊手術によるデメリットはそれほど大きくないか回避が可能なものであり、メリットのほうが上回ると考えられます。
不妊手術の時期は、雌では初回発情の前(犬も猫もそれにより乳腺腫瘍の発生率がかなり抑制されるため)、雄では成長後なるべく早期にというのが理想的です。当院では犬種にもよりますがおよそ乳歯の生え変わりが終わる6ヶ月目あたりを目処におすすめするようにしています。家に迎えるのが3〜4ヶ月目だと、来て直ぐに手術と感じられる方も多いと思います。しかし乳腺腫瘍の発生率は発情回数が少ないほど低くなることがわかっており、悠長に考えている暇はありません。できれば家に迎える前から、不妊手術の必要性については考えておいていただきたいものです。