診察しながら体のあちこちを触っていると、関節を動かしたときにゴリゴリと引っかかるような感触があったり、通常動く範囲以上に関節が動いてしまう、あるいは動かなければいけない範囲動かない・・・動いてはいけないところが動いてしまうとか、様々な関節の異常が分かる場合があります。しかも、意外と多く。
「足を気にすることないですか?」と伺うと、そういえば時々右足を付きづらいとか、スキップするような感じになるとか、それなりに症状がある場合もあるのですが、すぐに改善したりするとなかなか「病院へ連れて行こう」とはならないようですが、こうした関節の「初期の異常」は非常に重要な所見です。
関節は異常が始まってすぐは「時々違和感がある」のが症状です。つまり「いつも痛い」わけではありません。時々違和感がある状態がしばらく続きますが、その間関節の状態はゆっくり悪くなります。でも意外と「激しく痛い」という症状を起こすことはありません。関節の異常がかなり進行してもうどうしようもなくなると「明らかに痛い」状態が多くなり、流石にこれはおかしいと病院へ連れて行くことになります。
関節は骨、軟骨、靭帯が精密機械のように組み合わさってできています。どこか少しでも異常が出ると全体に影響が出て関節の変形が進んでいきます。一度形が変わってしまった関節は完全に治ることはなく、加齢とともに変形が進んでいきます。早い段階でこれらの変形を遅らせるための手を打っておけば、関節を長持ちさせることができます。
・太っていれば痩せる
・生活環境を滑りにくく、必要以上に立体的な動きをしなくてもいいように、バリアフリーにする
・その上で、適度な運動をする(この適度はその子その子で違うので、当院で診察を受けた上でご相談ください)
・初期の関節の変形には「脂肪酸」が有効です。いろいろな脂肪酸がありますが、当院では実績のあるものをご紹介しています。ご相談ください。
・実際に痛みがあるときには、理学療法のレーザー治療器を用いたり、痛みのコントロールのために鎮痛剤などが使用されます。
・年齢、関節の状態、痛みの程度によっては手術による治療が最適な場合があります。関節の手術は「形を治す」だけではなく「機能を十分治す」事が必要で、その場しのぎではなく手術後数年経過してもきちんと関節の病状がコントロールできていることが必要です。関節の部位によっても違いますが、その時の状況に合わせて最適な手術が行えるように、場合によっては高度な手術をできる獣医師をご紹介いたします。
関節の異常は手術の他に内科管理が重要なことも非常に多く、それだけで一生を過ごせる場合もあります。痛みが取れなくなる前、関節の変形が始まったときから治療を始めることで、関節の異常を感じない「未病」の状態を長く続けてあげることが可能になります。