猫のPちゃんは生後半年の頃から口内炎に悩まされていました。
猫の口内炎は、口の奥を中心に重度の歯肉炎や口内炎を起こし、痛みが強い疾患。ウイルス感染症が原因とも言われていますが、あまり原因がはっきりしない場合もあります。内科治療への反応が悪く、代わりに抜歯により症状が改善することが分かっています(臼歯の全抜歯で70%、犬歯・切歯も含む全抜歯で90%が完治すると言われています。
「歯を抜く」とその後大丈夫?と心配される方が多いのですが、人間では歯がなかったら食事や会話に支障をきたすので気になるところですね?猫では奥歯は大きなものを一口サイズに小さく切るためのもので、キャットフードをもらって生活しているとなくても困ることはありません。むしろ慢性的な痛みから開放されて元気にある子が多い印象です。
Pちゃんは内科治療やレーザーによる緩和療法を続けていましたが、左下の臼歯がグラグラし始めてしまったこと、内科的な治療で症状が改善しづらくなってきたことを機に、抜歯をすることになりました。
Pちゃんの口内炎は、臼歯(上下左右)に炎症が強く、犬歯や切歯には炎症が見られません。頬粘膜は臼歯が当たる部位に口内炎が見られていました。
レントゲンを撮ってみると、左下のグラグラしていた歯は抜けてきているのではなく根本が折れているものであることがわかります。この折れた部分を残しておくと、いつまでも口内炎が治りません。顎の骨を削って掘り出す必要があります。
処置が終わったあとの口の中。抜歯部分は細い吸収糸で縫合してあります。両側左右の赤みがこのあと引く予定です。
昔はこうした口内炎にステロイド剤が多用されていましたが、ステロイドの長期投与による副作用が強いこと、抜歯による症状改善がかなり期待できることから、全身麻酔が許容できる体調で内科的な管理が難しい場合にはこうした処置が行われるのが一般的になってきました。
・・・とはいえ、これだけの歯を全部抜くのは処置をするのは一苦労。猫ちゃんのためにも、より効果的な治療が見つかることを願ってやみません。